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彼の幸せは、まだ夢の中 


 久々にアニメダ小話。
 メタビー→ロクショウっていうかメタビー→ロクショウ→教授っぽい。
 ロクショウはまだ教授を捜して放浪中。





 日差しがとても柔らかくて、風がひどく優しい。
 眠くなるな、とロクショウはアイセンサーを細めて嘯いた。メダロットに睡眠など必要ないモノのように思えるが、どうしてか自分は寝ることが好きらしい。涼しそうな木陰、良く晴れた青い空、心地の良い風、木々の葉が揺れる音。それらが丁度全てそろったここは、今は、まさに絶好の昼寝日和だろう。
「最近は雨続きだったからな」
 ようやく顔を出した太陽が「昼寝しないともったいないぞ」と囁いているような気がして。
 ロクショウは一度姿勢を直し、ゆらりとアイセンサーの光を消した。
 

 
 いつもは遠回りだからと通らない道を、なんとなく気まぐれで歩いていた。久しぶりに天気が良いから、散歩も兼ねてたまにはいいかもしれないと思ったのだろう。
 いつも人影がなくて、木と草が茂った公園に白い体を見つけた。ロクショウ、と声をかけてみても返事はない。返事くらいしろよ、と少し口調を強めて近づけば、アイセンサーに光がなかった。ああそうか、とそれを見て少し脱力。久しぶりの晴天だもんな、そりゃあ昼寝日和だよなあ、とメタビーはひとりごちる。
 木の幹に体を預けて眠るロクショウの隣に腰を下ろし、まじまじと顔を覗き込む。白いなあ、とか。丸っこいなあ、とか。あ、また傷が増えてるなあ、とか。数日ぶりに見れば、改めて思ったり新しく見つけたりすることがいくつもある。
 ん、と低い声が短く漏れた。あ、起きるかな、と反射的に顔を引いたが、少し身動いだだけで起きる気配はない。どうやらずいぶんとぐっすり眠っているらしい。眠りが浅いときは気配がしただけで目が覚めるのに、隣に座っても気づかないのだから。
「……か、……じゅ」
 絞り出すような声が低くこぼれ、メタビーは聴覚センサーを傾ける。
 なんとなく、予想はできたけれど。
「どこです、か……きょ、じゅ……教授……っ」
 ああほら、思った通り。メタビーは小さく排気して、ピクピクと震える自分と同じ小さな手に気づく。
 それに自分の手を重ねれば、ぴくりと一度震えて、すぐに力が抜けたのが分かった。
「教授……」
「おう」
「今日は……良い、天気ですね……」
「そーだな」
 もごもごと寝言を零す姿は普段のロクショウからは到底想像できないモノで、自然と緑のアイセンサーがにやっと歪んだ。
 もしも夢の中で出会っているであろう老人が、重ねているのであろうその手が、節原源五郎ではなくてメタビーだと知ったらどんな顔をするのだろうか。
 そこまで考えて、メタビーは少しだけ苦そうに笑った。そんなの考えたくもない。夢の中くらい、幸せでもいいじゃないか。現実で空っぽになってしまったのだから、夢の中でくらい、満たされてもいいじゃないか。
 ぎゅ、と重ねる手に少しだけ力を込めれば、安心したように重ねた手から力が抜けるのが分かる。ああ、きっと幸せなんだろうなあ、と緑のアイセンサーが和らいだ。
「イッキを迎えに行くまで、まだ時間があるからよ」
 それまでは、この手を貸してやるよ。
 小さく、誰にも届かないくらい小さく囁いた。



 ゆらりと紅の光が灯り、ロクショウは意識を覚醒させる。空は青から赤に変わっていて、遠くを見つめればうっすらと黒い。
 ずいぶんと眠ったようだ、と腰を上げる。風はすっかり冷たくなっていた。
 幸せな、幸せな夢を見ていた気がする。夢の中で、あの人に会っていた気がする。そして、そして。
「温かい、手だったな」
 自分の小さな手を見下ろし、愛おしそうに撫でた。まだ、温もりが残っているような気がして。

 遠くからこちらへ飛んでくるにぎやかな友人の緑の体に気づき、ロクショウは温もりの残っている手を振った。 


――
 夢と言っても、過去の記憶を辿っているだけなのかもしれない。
 教授とバートンと3人で暮らしていた研究所の時代を回想しているだけなのかもしれない。
 まだ過去に安らぎを見いだしているのかもしれない。

 


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